23.桜の下で野点ゆかしく

更新日:2017年03月27日

撮影:昭和32年3月

春の彼岸が過ぎると、間もなく桜の季節が巡ってきます。

あの頃は、戦後10年を経てようやく衣食住も安定のきざしをみせ、人の心にもゆとりが出てきた時代でした。この写真は、あるお茶の会の人達が、桃園山定輪寺の寺内をお借りして野点の会を催した時のものです。

石の階段を登ると、右手鐘つき堂の前に桜の老木かありました。たしかシダレ桜だったと思います。年代はわかりませんが老樹と思われる桜で枝もわずかに残っている程度でしたが、巡り来る春を忘れずに見事な花をつけてくれました。この桜花の下の野点はまことに風情ゆかしぐ心の和らぎを覚えています。この老桜樹も今はありません。